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ウナギを食べて守る?

毎日新聞本社ビルで平日夜に不定期開催される毎日メディアカフェ。今日はウナギがテーマと知り、行ってきた。

 

前々回に参加したのは、いま話題の豊洲市場の土地取得を巡る石原都知事の怪しい動きを長年追ってきたジャーナリストの池上正樹さんと加藤順子さんのトークショー。直近の参加は、福島漁業のドキュメンタリー映画「新地町の漁師たち」の山田徹監督と『魚と日本人』の濱田武士先生のトークショーだった。どちらも勉強になった。

 

今日は図らずも、試食として養殖ウナギの蒲焼きが配られ、ご馳走になった。産地は、四国の四万十と鹿児島の川内(せんだい)。資源量が心配で食べるのをやめているから、正真正銘のウナギは超久しぶり。やっぱり美味しい。

 

でも今、ニホンウナギを食べて良いのか。貴重なシラスウナギの密漁が横行しているそうではないか。今日いただいたものは、いずれも地元産のシラスウナギを育てたもので、トレーサビリティーばっちりらしい。でもなー。数を増やしたいのに食べましょうって、なんかなー。

 

今日のプレゼンテーターは大地を守る会さん。パルシステムと同じく、ウナギを食べて守る活動をしている。つまり、ウナギを買う人が間接的に寄付をして、ウナギの保全活動を支える仕組み。大地を守る会の場合は、「ささエール(ウナギの英名eelにちなむ)」というプロジェクト名だ。

 

そして、カタログを見ると、ビジュアル的には他店と同じく、思い切り「土用の丑の日にはウナギを!」と呼び掛けている。こういう食欲をそそる広告が存在する限り、日本の消費がウナギ乱獲のエンジンとなってしまう現状は変えられないのでは。

 

ウナギ文化を放棄するのではなく、文化継承のためにも、いったんお休みしましょうって言ってほしかった。代替魚の活用で蒲焼のたれの製法や焼きの技術(他の魚では無理かな?)は温存しつつ、資源の復活を本気で待つほうがいい。環境配慮に積極的な企業にこそ、いったん「ウナギおあずけ」をPRしていただきたい。ウナギが順調に増えてくれる確証はないが、運よく資源量が戻れば、また堂々と食べられるのだから。

 

もちろん、ウナギ激減の原因は乱獲だけではない。今日のトークショーでも出ていたが、河川環境の悪化や海水温上昇など海洋環境の変化も一因だろう。でも複数の理由で不安定になっているからこそ、食べ続けている場合ではないと思うナ。

 

何を隠そう、ここ浦和区もウナギが町おこしアイテムのひとつになっている。県庁所在地の駅前には、やなせたかしさん作の「浦和うなこちゃん」がいる。そして呑気に毎年「うなぎまつり」を開催して大勢で嬉しそうに絶滅危惧種を消費している。さいたま市長へのポストに「資源問題に触れてほしい」と陳情を入れたが、全く啓蒙活動をする気配がない。

 

大地を守る会の担当者さんたちは、各所に話を聞きに行き、2015年からはウナギ研究者の九州大学の望岡(もちおか)典隆准教授の教えを受けているそうだ。今は主に、ウナギやその餌となる生き物の生息場所を確保するために、石倉魚道や石倉カゴの設置に力を入れているという。

 

河川環境に注目するのは、さすが!と思ったが、とても効果が限定的な気がしてしまって。石倉カゴを設置したりするのは根本解決になるのだろうか?という疑問を挙手して質したら、「ささやかながら」貢献できればと謙そんしていらっしゃった。確かに1社でできることは限られる。多くの企業が協力して、より大規模な保全活動を展開したら、すごくカッコイイと思う。ヒトの安全も守りつつコンクリート固めの河川を自然に戻すプロジェクトとか。

 

放流事業は派手なだけで効果が無いと知って、それをつつしんでいるという同社の誠実な姿勢に、とても好感を持った。でも、まだ少々、放流イベントに固執気味。それはきっと、私たち消費者が未熟なせいだろう。買う側・食べる側がきちんと学び、見せかけのエコでなく、本質的なCSR活動を応援するレベルに達したら、企業側もパフォーマンスに走らずに済む。

 

同会は近々、望岡先生を招いた一般向けの勉強会を企画してくれるそうだ。素晴らしい。ウナギ研究者のバックアップを得て進めている活動は、そうでないものよりも断然、信頼できる。

 

でもやっぱり、食べよう!には違和感。私は当分、ウナギを買わない。