タコの本を読んだ。
『タコは海のスーパーインテリジェンス』
周囲に「イカの人」とみなされていたという研究者が、イカと同じ頭足類に属するタコについて書いた本。要所でしっかりイカとの違いにも言及しつつ、タコの知能や心理に迫っていく。タコ好きな国民ほどタコ研究に熱心という、フィールドの地理的・文化的背景も興味深かった。
脳のみならず腕まで賢い彼らがすむ感覚世界って、どんな感じなんだろう。ヒトと似た構造の目を持っているとはいえ、彼らの一生は多くの海洋生物と同じく水中を漂うプランクトンとして始まり、ぐんぐん脳を成長させて賢者の顔で海底を這い回るようになる。そして驚くほど短命だ。私たちと違い過ぎて尊い。
じっと人の行動を見つめるタコさん。何を考えているの?
いろいろなタコ実験エピソードにわくわくしながら、Netflixで見たタコが主役のドキュメンタリー「オクトパスの神秘 海の賢者は語る」を何度も思い出していた。この本にも、やたらポテンシャルの高い個体が登場するけれど、あのドキュメンタリーの主人公も妙に人間臭くて不思議な子だったなぁ。
パンデミック以降、アクリル板越しの人付き合いが日常になった。この本に出てくるタコ同士の対面実験では、リアル接触に比べて、透明板を介した時は盛り上がらない。最近の私はオンライン会議ばかりだけど、タコも(ヒトよりずっと触覚に頼る生き物ではあるけれど)二次元の画像だけでは、いまいち対象への理解が深まらないらしい。だよね、と同情した。
本文の途中に2つ、YouTube動画に飛べる二次元コードあり。とても短いビデオだけれど、キュートな二本足のタコの姿に釘付けになった。特に「殿中でござる!」みたいな1つ目の動画が大好き。繰り返し見た。
著者の池田譲(ゆずる)氏のゼミの学生たちとの実験、海外の同業者との交流など、大学で海洋生物を研究する暮らしの一端が垣間見える描写も多いから、海の生き物を探究する人生に憧れる中高生にもオススメしたい。