クラウドファンディングから参加して注目している
ドキュメンタリー映画「おクジラさま」が再熱している。
映画館でも再上映される。
日本が今月、商業捕鯨を再開したからだ。
昨日も見てきた(3回目)。2月21日にIWC前議長の
森下丈二氏と佐々木監督のトークショー付き上映会が
あって、その時のことは記事に書いた。ブログでも触れた。
その会場で見かけた角南所長率いる海洋政策研究所が、
7月4日、上映会を所内向けに開き、
媒体編集に関わっている私も末席で鑑賞させてもらった。
上映後には、豪華なメンバーによる対談があった。
その中で佐々木監督が指摘した通り、
捕鯨を巡る混乱を生んでいるのは、突き詰めれば、
宗教観の違いだろう。
多くの日本人が、やや違和感を感じるような、
人間に近い動物ほど偉いというヒエラルキー。
つい先日、土佐清水の「ジョン万次郎資料館」で、
アメリカの捕鯨全盛期の記録映像を見てきた私は、
壮大な矛盾を感じてしまったのだが、今の反捕鯨
の激しさの根底に鯨類への偏愛があるのは確かだ。
生体販売に支えられているイルカショーは今後、
国際的には否定されていく方向だろう。
確かに、どこもかしこもショーをする必要はない。
のような水族館もある。ショーがなくても人気の施設だ。
京都水族館(まだ行っていない)ができる前には、
京都に水族館は要らないとか、イルカショーを
やらないでくれとかいう、署名活動があった。
動物福祉を重視する流れは、日本にもきている。
水族館自体を否定するのは極端と思えるが、
確かに、動物園や水族館にいる動物たちは結構
病んでいたりするので、正直、見ていて辛い。
魚の色や様子も、海に潜って会う時と違う。
でも、映画の中でも言われていた通り、大きな
海産動物の生きた姿を間近に見れる施設というのは、
環境教育などには、それなりの価値があるはずだ。
私も数多くの水族館に今までお金を落としてきた。
水族館は、繁殖と生態研究にも役立っているから、
今ほどは要らないが、少しはあってもいいと思う。
漁網にかかってしまった売れない魚の行き先の
一つでもあるし。いや、水族館が減ったら魚は
港に持ち帰られずに、すぐ海に返してもらえる
のかもしれない。生きていれば、の話だけれど。
日本全国の水族館でイルカを飼わず、国際的にも
幸か不幸か有名になってしまった太地町でだけ、
研究目的で飼育するのが正解なのかも。
生体を湾内で飼育展示して鯨類の一大研究拠点に
なろう、という構想は、かなり前から代々の町長
が練ってきたそうだ。とはいえ、映画の中で町長
が示した湾全体が施設になっている未来図を見て、
他の生物への影響が心配になってしまった。
一つの湾の犠牲は割り切るということなのかな。
海と飼育場との隔離壁は、いずれは取り払い、
自由に出入りできるようにするという話があり、
そこにも不安を感じた。そんなことをしたら、
広大なイルカ餌付け施設になってしまうけれど、
それって自然なイルカの群れに変な影響を与え
ないのだろうか。
何度見ても、いろいろ考えさせられる映画だ。
凝り固まりがちな概念を揺さぶられる映画は、
2時間を費やしてでも、繰り返し見る価値がある。
捕鯨に携わる日本人の気持ちを知る手がかりに
なる映画でもあるから、欧米やシンガポール、
コスタリカやフェロー諸島などでも上映が続く。
国内でも市民上映会が盛んだ。
ユナイテッド・ピープルの関根さんによると、
7,8月だけスペシャル価格の2万5000円で
上映会が開催できるらしい。
余談だが、映画の主人公的な米国人ジャーナリスト
が、映画の中で、日本の田舎に行くと、海外が注目
してくれたと喜ばれ、偉い人たちから食事などの
歓待を受けると話していた。フリーランスで自腹で
走り回っている私は、大手紙に所属するだけで優遇
される人たちを常々横目で見てきたから、鼻白んだ。
そりゃ私も人と人との付き合いの範囲で接待的な場
をいただくこともあるし、全否定はできないけれど、
マスコミをちやほやして付け上がらせるのは間違い。
自分は特権階級だと勘違いしてしまう記者がいそう。
珍しくメジャー館でも上映中の社会派映画
「新聞記者」(邦画ドラマ)を見ても思ったが、
権力におもねるマスコミは百害あって一利なしだ。